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 人生100年  2018.6.23

「老後を変えるサミット」

“老後”という言葉、どのように感じますか?

2018年6月15日、メットライフ生命主催「老後を変えるサミット」に出席させていただきました。私たち金融デザインのメンバーでいつも語っているキーワードと同じキーワードを有識者の方々が発言されているのを聞き、方向性に確信が持てたと同時に、人生100年時代の今後に一つの答えが見えてきました。

人生にピークをつくると老後ができる

今回のサミットで印象深かった登壇者のお一人、東京大学名誉教授である黒川清氏は、1936年生まれにはとても見えないお姿とパワフルさでした。カッコいいです。
中央が黒川氏

 
黒川氏がずばり言いました。「人生にピークをつくるから老後ができる」と。おっしゃる通りですね。職業人が終わるとき(退職)=人生のピークといった認識が刷り込まれているので“老後”が存在しているだけです。
 
定年制は明治に生まれ、大正に普及し、昭和に入って定着した日本独特の制度。それに伴い構築されてきた世界屈指の社会保障制度も老後という言葉の存在を確定付けています。定年制度がない世の中であったなら、老後といった概念は生まれなかったでしょう。社会保障制度も今とはまったく別のものになっていたはずです。
 
さらに黒川氏は「会社をやめる(定年退職する)=社会人が終わりではない」と話されました。会社に勤めていることが社会人である、が一般的な認識の中では、やはり定年退職=社会人終了=人生のピークとなるのが普通なのでしょう。
 
私のような事業者の多くは独立起業した時点で老後の概念はなくなり、仮に自分の事業をやめたとしても頭の中に老後という文字は復活しません。いわゆる生涯現役であることが当たり前になっています。
 
結局、個々人がどう生きていくか、人生をどうとらえるかによって老後が存在したりしなかったりするわけで、ライフイベント化されている老後は意外と概念的であることがわかります。そうであるなら、人生にピークをつくることなく生涯勉強、生涯労働、生涯社会人であり続けたいですね(私はそうしたいです)。
 
生涯現役でいるためには健康であることが条件。医師である黒川氏からの健康維持のアドバイスは以下のとおり。
 

・何事も目的をもって行う。惰性ややらされは逆効果
・疑問に思ったらすぐに調べる、勉強する
・考えながら運動する。運動しながら脳も鍛える
・食べて動く!

 
ただし、黒川氏はフィットネスに行くなどの運動は特にされていないらしく、できるだけ階段を使うといったくらいだとおっしゃっていました(笑)。しかし、行動力、好奇心、熱心さなどが溢れ出ている方でしたからそれで十分運動になっていると思いました。

高齢者は増えない

もうひと方、印象深かった登壇者は、経済産業省 商務・サービスグループ 政策統括調整官(兼)内閣官房 健康・医療戦略室 次長 江崎禎英氏。
右が江崎氏
 

とある書籍にひと言反論を、と切り出し「高齢者が増加すると書いてあるがそれは違います」と指摘。資料お見せできないのが残念ですが、現在から2060年までの間に0歳から64歳までの人口は減りますが、65歳以上の人口は一定のところで安定します。
つまり高齢化は人口減少によって高齢者の割合が増えることを意味しているのであって、高齢者の人数が増えるわけではありません。そして2050年ごろから、50歳を基準とした人口の割合がそれ以上と以下で半々くらいになり安定します。
 
これを悲観するか楽観するか。江崎氏は別のデータを見せてくれました。75歳から79歳で男性15%、女性20%、70歳から74歳で男性10%、女性8%しか不健康層はおらず、ほか多くの人は仕事ができる状態であることがわかります。
また、過去の疾患の主な原因は感染症やけがで、医療が未発達だったころには死に至ることも多かったわけですが、現在医療は発達し、疾患の中心は自分で予防ができる生活習慣病です。つまり、健康管理をちゃんと行うことによって不健康を回避し、現役世代でいられる期間を長くできる可能性が大きいといえます。
 
人類学的には120歳まで生きることができると言われています。そういったことも考えると、今後を悲観することなく長い人生を楽しむために必要なことに目を向けるべきではないでしょうか?

“ありがとう”と言われる環境が長寿時代には必要

江崎氏のお話は、高齢者の割合が増えても健康層が多いので仕事の環境や本人の意思次第で長寿化の時代を過ごしていける、というものでした。

 
黒田氏、江崎氏のお話を聞いて思うのは、これからの時代は自分の意識次第で今後の生き方と人生が変わるということ。老後を意識するかしないか、健康か不健康かは自分の意識次第で変わります。よって、生涯現役でいられるかどうかではなく「生涯現役でいたいかどうか」というように考え方次第で人生が変わります。生涯現役でいたいなら、健康管理、アイデンティティの確立、お金の管理はこれからの時代のキーワードとなるでしょう。
 
そして、ありがとうと言われる環境、尊敬される環境が長寿時代には必要という発言も。人間は誰かの役にたっているときに最もよい精神状態だそうです。誰かのために何かをする、そして感謝される、誰もがいつもそんな環境に身をおける社会づくりが私たちのこれからの課題です。
 

 
ライター:石川英彦
HIDEHIKO ISHIKAWA

代表取締役
大学卒業後、就職することなく海外放浪へ。大好きなオートバイで北は「アラスカ・北極海」南は「アリゾナの砂漠」まで、北米を野宿しながら37,000キロ走破。帰国後、老舗ホテルでボーイの仕事し、サービス業とはなんたるかを学ぶ。あるきっかけで保険代理店の手伝いをしたことで金融の世界を知る。その“奇妙”な世界に疑問を感じ「お金に関する情報形成」「売り手と買い手がハッピーになる金融コンテンツづくり」をミッションとした、 株式会社マネーライフナビを設立(1996年)。FP(ファイナンシャルプランナー)の実務をこなしながら多数の金融コンテンツを手がける。2011年には エフピーリサーチアンドコンテンツ株式会社を設立。全国各地のご当地FP®︎による多数の意見を発信。ただいま、「金融を普通にする」ための起爆剤を充填中。 >>プロフィール
 

 

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