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 インタビュー  2017.07.24

金融を普通にするパイオニアとなるか!?住信SBIネット銀行に見る身近なFinTech最前線【織田編】
 
「話のレベルが違った!フィンテックのカオスを生き抜く金融マンを直撃インタビュー!」

 
 これまで雑誌や書籍、インターネットなどから情報を拾い、FPとしてもどう捉えて行ったらいいものかと織田なりに試行錯誤で向き合ってきたフィンテックですが、実際のところ金融機関の中でもフィンテック現場の最前線で働く人たちがどのようなことをやっているのか?あくまで断片的な情報が行き交うだけで、確かなものは得られなかった環境でした。というより名古屋にいては、なかなか中枢の人たちと繋がることが物理的に難しかったりする環境でして。
 
 ところが!先日、本当に恵まれたことに金融デザインTEAMとしてご縁をいただき、ついに実現!我らが石川代表が直談判して口説いてきてくださったという、もうファインプレイとしか言いようがない。そんなすごい流れで遠く離れた名古屋からもその最前線のキーマンに会うことができました!
 

キーマンに会う!

 それが、現在は住信SBIネット銀行でFinTech事業企画部長をされている 吉本憲文(よしもと のりふみ)である。とにかく経歴がすごいのなんの。日本銀行から全国銀行協会から経済産業省まで、もう国家戦略の機密を扱う様々な研究会のメンバーであり、今、国としてどうフィンテックと向き合っているか?という中枢の状況を知る数少ないメンバーのひとりなのです。そんな方から直接お話を伺えるとなり、もう興奮止まず。しかも、僕たち金融デザインTEAMのためだけにシークレットな勉強会を開いてくださるという。もうレアすぎるだろ~!そして、どんだけいい人なんだよ~!という状態で、ガッツリ質問をまとめていってきました。今回は中でも、API技術に関する内容を中心にお話を伺うことに。

吉本憲文(よしもと のりふみ)住信SBIネット銀行FinTech事業企画部長
ヤフー、野村総合研究所を経て、2015年2月に住信SBIネット銀行に入社、2015年8月より現職。
 
【主な参加研究会等】
日本銀行『ITを活用した金融の高度化推進に向けたワークショップ第二期』メンバー
全国銀行協会『オープンAPIのあり方に関する検討会』メンバー
経済産業省『産業·金融·IT融合に関する研究会(Fin Tech研究会)』メンバー
 
【主な著書等】
週刊金融財政事情2016年5月2日-9日号特集フィンテック-みえてきた金融革命の実像
『住信SBIネット銀行のプロックチェーン実証実験の成果』寄稿
週刊金融財政事情2017年6月5日号特集オープンAPIで描く新たな金融
『住信SBIネット銀行が目指す金融イノベーション』寄稿

結論から申し上げて・・・

 結論から申し上げますと、大変申し訳ないのですが、ほとんどが口外できない情報だらけだったという笑うしかない勉強会でして、ましてや、こうしたネット上では到底記事にできない内容のオンパレード(笑)といっても、話の輪郭といいますか、FPや金融機関で働く人には知っておかないとまずいような概要的な情報公開はOKをいただいていますので、言葉数少ないかもですが、私なりに記述していきます。
 

そもそもAPIって、ご存知ですか?

 これがわからないと今回の話が進まないのですが、APIとは「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」という言葉から来ています。この時点で、なんの話をしているのかわからない方もいらっしゃることと思いますので、簡単にご説明を。
 
 ものすごく大雑把に噛み砕くと、情報(ソフト)の一部をWEB上に公開して、誰でも利用することができるようにする技術のことです。世界で一番有名なAPIというと、Googleマップと言われています。今や、誰もが自分の会社やお店などをGoogleマップにピンを立てることができますよね?よく考えたらどうしてできるのだろうという話なのですが、あれこそが実はAPIでして、Googleさんが誰もがマップを触れるようプログラムの一部を公開しているのです。そして、そこに情報を書き込む申請をすると、ピンが立つという風になっています。
 
 この一般公開するAPIテクノロジーを使うことによって、Googleマップは無限に発展していく仕組みになっているというわけですね!今や、APIは欠かせない技術。では、これを金融業界で置きかえたらどうなるか?というのが、今回の吉本氏の話のテーマです。かなり大雑把に伝えていますし、吉本氏の話は、こんなレベルではなく、とてもディープな内容でした。

銀行のAPI解放時代が到来!

 では、口座情報を扱う銀行がAPIテクノロジーを使ったらどうなるか?例えば、最近有名になってきている家計簿アプリなんかは、最初の設定で許可しておくと、銀行口座の状況が表示されるようになっています。スマートフォン一つで、ATMはおろか銀行のWEBサイトでID・パスワードを入れる必要すらもなく、家計簿アプリひとつでお金の状況が把握できてしまうのです。よくよく考えたら「なんで?」って話です。これこそが銀行がAPIテクノロジーで情報の一部を公開していて、アプリを作っているフィンテック企業が、このAPIを利用しているという状態です。先ほどのGoogleマップでいえば、銀行はGoogleにあたり、会社やお店は家計簿アプリを作っているフィンテック企業というわけです。おおよその構図が、お分り頂けたでしょうか?
 

金融機関の向かう先はいったいどこに!?

 では、これらのAPIテクノロジーが極限まで進化していったらどうなるか?というところがテーマです。正直、個人的な感覚でいうと、現在の段階では「少しだけ便利になったかな?」程度であり、目に見えて「革命的」とまでは到底行っていません。私もFPとして日々現場で仕事していますので、最終的なエンドユーザーである消費者との面談の際に、どの程度APIが関係しているか?という意識は常日頃から持っています。しかし、顧客の実際の家計管理やその方法をみますと、「なんの話ですか?」という状態が素直な現状です。まず登場することはありません。名古屋も一応ですが(笑)、3番目に大きな都市であり、それなりに人口の多い場所であります。2000年以降、これだけ インターネットの時代になろうともインターネットバンクを中心に管理している人が、まだまだ圧倒的に少ないのが現実。そんな状況下では、次のステップであるAPIテクノロジーなんていう話は、ほとんど宇宙用語に等しい現実です。もちろん、APIがそのままキーワードとして大衆化する必要もありませんが。
 
 ただ、素晴らしかったのは最も最先端にいる吉本氏こそが、この現実をしっかりと理解されていたこと。むしろ、インターネットで取引する比率は 3割以下である現実など。私の知らない実測的なお話をくださいました。インターネットバンクは、まだまだだな~と思っていたもののまさか3割も満たないとは。つまり、お金をインターネットでやりとりする未来は、まだ始まったばかりであり、テクノロジーだけが前に進んだところで全く意味がないという話です。「人間がついていけないものは、ないのに等しい」 (←織田の勝手につくった格言です^^)
 
 とはいえ、この状態がこのまま続くわけでもありません。例えば30年先はどうなる?とか、もう少し先の未来を考えると、その情景が随分と違ってくることでしょう。なんといっても、今や2歳児がiPadで自分の好きなYouTube動画を見てしまう時代ですから。
 

最終的には「ユーザー体験」がどう変わるのか?

 これまた吉本氏のおっしゃっていた通りですが、最終的にはエンドユーザーである消費者の生活や体験がどう変わるかが全て。いかに前進するかにあります。APIをどのように組み合わせたら、もっと豊かで便利になるのか?金融機関だけでなく、業界全体が向かう先の光が、ほんのり見えた瞬間でした。結局のところ、今よりも便利で、今よりも面白くて、今よりも馴染むものでなければ、普及するはずがありませんから、すべては「ユーザー体験」ということに落ち着きました。
 
 つまりは、クリエイティビティ性がものすごく大切になってきます。何を生み出すのか?という柔軟で創造性ある発想が、今後の金融業界を作っていくのだろうということ。銀行のような金融機関だからこそ苦手な分野もあったりします。逆に私たちのような最もエンドユーザーと接するFPだからこそ発想できるAPIの使い方があるのかもしれないなーと、勉強会でふと思ったのでありました。
 
 なんにせよ今回の勉強会はとにかく刺激だらけで、話の内容もさながら、その内容を聞きながら頭がぐるぐる動いて、とっても「いい疲れ方」をした勉強会となりました。ありがとうございました。

ライター:織田昌典
MASANORI ODA

金融デザインプロデューサー
元ミュージシャン。音楽活動に限界を感じていた2000年、ITバブルがきっかけで経済に興味を持つようになり、ファイナンシャルプランニング資格を取得。2006年「ファイナンシャルプランナー織田事務所」を設立。地道な活動の中でFP事務所を軌道に乗せると、FPを志願する仲間が集まりはじめ、 2012年FPが集まることで面白いことを生み出すカンパニー「織田プロダクション」を設立。名古屋証券取引所をはじめ、高校・大学など教育機関、銀行・ ファンド会社などと協業。様々なイベントを成功させる。また、その過程で「デザインと表現力」を高く評価され、2014年9月主にファイナンス分野を中心としたデザインオフィス「SHOWCASE」を立ち上げる。金融テクノロジーやデザインへの関心から、フィンテック分野の研究にも精を出し、FPからフィンテックFPへとシフトした最近。 >>プロフィール

 


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