HOME | interview | ライフネット生命インタビュー第1回「ロゴデザイン」編 その精神は「顔」にあった!

 インタビュー  2017.03.02

ライフネット生命インタビュー(1)

 いま、金融機関はどのようなコンセプトのもと、ブランドや営業戦略などにデザインを活用しているのか、実際に会社を訪れて話を聞かせていただく突撃取材シリーズの第1弾!トップバッターとして金融デザインTEAMが注目したのは、特徴的なシンボルマークや徹底した情報開示で「人とのつながり」「わかりやすさ」を訴求するライフネット生命です。奇しくも、金融デザインTEAMの本拠地の近くに本社を構えるご近所さんというご縁もあってか、取材の申し出を快く受けていただきました。「ロゴマーク」「ウェブサイト」「商品開発」の3つ分野から、これまであまり知られてこなかった、貴重なお話を含めてご紹介します。
 

 

第1回「ロゴデザイン」編
その精神は「顔」にあった!

 ロゴマークといえば、企業理念そのものを表す象徴的存在。金融機関の中でも特に特徴的なロゴマークのライフネット生命。ロゴマークに込めた想いや誕生秘話を常務取締役の中田華寿子さんからお聞きしました。
 

常務取締役:中田華寿子氏

金融機関のロゴマーク、描けますか?

 

インタビューの内容に入る前に……。
ロゴマークと言われて、どんな会社やブランドのものを思い浮かべますか? おそらく、ファッションや飲食、家具家電の業界のものならば、1つや2つは容易に描ける、という方もいらっしゃるのでは?
 
 では、金融機関のロゴマーク、描けますか? 私は金融デザインチームのデザイン担当でもありますが、一つとして正確に描ける自信がありません。街中にもネット上にも金融機関の看板やロゴマークはそこらじゅうにあり、目にする機会も多いはずなのに、意外と記憶には残っていません。
 
 そもそもロゴマークといえば、企業理念そのものを表す象徴的存在。にもかかわらず、これだけ思い浮かばないのはなぜなのでしょう? その原因の一つとして考えられるのは、金融機関選びの動機付けではないでしょうか。例えば銀行口座を1つ持とうと考えた際、銀行を選ぶ基準の多くは「みんなこの金融機関を使ってるから」とか「会社の指定機関だから」、「親が作ってくれていたから」といったケースが大半だと思います。金融商品を比較して選んだとしても、多くは数字の比較であって、その企業の理念といったところまで関心が及ぶ方は少ないように感じます。
 
 実は自分が勤めていた金融機関のロゴマークさえ覚えていない私ですが、そんな私でも、正確に描けるかは別としても、忘れない、忘れることのできないロゴマークを持った金融機関があります。それが、ライフネット生命。なぜ覚えてしまうのか、今回のインタビューを通じてその理由がハッキリとわかりました。そこには、使命感にも近い想いに裏付けられた「デザイン」という確かな技術が存在していたのです。

印象的なロゴ、一体誰が作ったの?

 

 今回インタビューに応じてくださった常務取締役の中田華寿子さんは、元々スターバックスコーヒーが日本に進出する際、マーケッターとして全国への出店に貢献し、上場まで導いたものすごい方です。 
 
 2008年5月に開業したライフネット生命。
「準備会社の段階では、コーポーレートカラーや社名も違うものでした」(中田さん)
 
 開業にあたり、当時の出口社長(現会長)と岩瀬副社長(現社長)のお二人を中心に、「生命保険の原点に立ち返り、新しい風を起こすことで、『生命保険はむずかしい』という時代を終わらせる」という企業理念のもと生まれたのが、「ライフネット生命」。そしてその理念を世の中の人に伝えたいという思いを込めて作られたのが現在のロゴマークです。
 
 ライフネット生命のロゴデザインを手がけたのは、ベネッセやバンダイ、カゴメ等、そうそうたる企業のCIデザインを手がけた、日本を代表するグラフィックデザイナー松永真(まつながしん)。松永氏がライフネット生命の理念を根本から理解し描いたのは、「人の顔」でした。
 
「今日、実はこんなものをご用意させていただきました。」
 
そう言って中田さんが取り出したのは、当時の松永氏のプレゼン資料!!なんと今回のインタビューのためにと、そっと見せてくださったのです。金融デザインチーム全員、思わず感嘆の声を漏らしながら食い入るように見てしまいました。

ロゴマークに込めた想い

 

 松永氏のプレゼン資料に書かれていたのは、ロゴデザインが「人の顔」である意味。それはまさに、出口会長と岩瀬社長の想いがそのまま描かれたものでした。
 
 わかりやすく、人の顔が見えて温かさが伝わる、そしてポピュラリティがあるものを。その上でユニークさを追求した結果、「人の顔」以外に考えられるものはないと松永氏は確信されたようです。手書調で、萌え出ずる若葉のようなみずみずしいカラーを使用することで、どこにでもあるような自然な印象から、親しみやすさと成長性、信頼性が表現されています。
 
 こうして生まれたロゴマークに具体的にどんな想いが込められているのか、中田さんからお聞きした内容を以下にまとめました。
 

・わかりやすさ
 生命保険会社独特の複雑で理解しにくいイメージをなくす
・ポピュラリティ
 わかりやすさを達成するため、世の中の人に受け入れられやすいイメージを
・人々の生活を守る
 サービスを作るのは人であり、人と人とのご縁を結ぶ自分や友達に勧められるような会社を
・ライフ&ネット
 人と人との生活を守るセーフティネットとして、人とのご縁をつなぐことが、生命保険の重要な役割である
・人の顔が見える会社
 ネット、ITと聞くと、人の顔が見えない、機械的、合理的、というイメージを持たれがちだが、顔が見え、人の温かみが伝わるように
・開かれた会社
 世の中にできるだけ情報提供をし、透明性のある会社を作ることで(経営陣も顔が出てる)信頼と安心を
・親しみやすさと、成長性
 萌え出ずる若葉のような瑞々しいカラーを使用。当たり前に存在しながら暖かく生き生きとした印象を

 
 このように様々な想いを込めて生まれたのが、現在のロゴマークです。このロゴマーク、松永氏が手描きで描いたものをグラフィックにしたもので、実際には膨大な数を描き上げて、その中で今皆さんがよくご存じのこのマークを採用したそうです。これだけの要素が、そのシンプルなロゴマークに込められていたのです。しかしながら、デザインを通じて潜在的な意識に語りかけ、いつの間にか記憶に刷り込まれてしまう。自分の勤めていた金融機関のロゴすら思い出せない私ですら覚えてしまうその理由が、ここにありました。私の中でこれまであった「なぜか忘れない」が、「忘れるわけがない」という確信に変わった瞬間でした。

ロゴタイプ(書体)を含めてわかる、ライフネット生命の存在意義

 顔のロゴマークの横や下には、アナログなシンボルマークとは対をなすようなデジタル感に溢れたロゴスタイル(書体)があります。中田さんはこのように語ります。
 
 「ロゴマークで申し上げた通り、ライフネット生命は顔の見える、温度のある会社を目指しています。そしてその実現のために、私たちはインターネットを中心としたデジタル技術を最大限に活用しています。」
 
 理念そのものであるマークを、デジタルが下支えしていたのです。最後のTの字が包み込むようなイメージなのは、これらの技術を持ってお客様の人生を支えるセーフティネットという在り方を意味しているのだそうです。そんなメッセージを表現する為に、あえてデジタル文字を使用していたとは!これには金融デザインチームも皆驚嘆、食い入るように見てしましました。

想いをしっかり受け継ぐために

 

 これだけの想いがこもったロゴデザインであっても、会社が長く続けば人も変わり、少しずつその想いが薄れてしまうのでは、と中田さんにお尋ねしてみました。
 
 「ロゴマーク等CIデザインは私たちの財産であり、語り継ぎ守り育てていくものであると考え、使用に関する明確なルールを築くだけでなく、『開業時を振り返る勉強会』などを開いています。開業当初からいた社員が、当時の熱い想いや苦労話を現在の社員と共有するといった取り組みもしています。」
 
 ライフネット生命という会社がなぜ存在するのか、そしてどんな過程を経て今があるのか、これらを社員全員で理解し合うということで、ロゴデザインに込められた想いもしっかりと伝えられているようです。

人であることにトコトンこだわる生命保険会社、それがライフネット生命

 

 生命保険は、目に見えない商品でありながらお客様とのお付き合いが長期にわたるもの。企業理念のもと、ライフネット生命が今掲げる目標は、「100年続く良い会社、強い会社」。利用者に安心して将来に渡り付き合っていただけるよう、より堅牢な会社を目指しています。良いこと悪いことを問わず、あらゆる情報を透明にすることで、評価を恐れずヒントにしようとするライフネット生命の志と姿勢が垣間見えます。
 
 企業とは、人により成り立つもの。「金融を普通に」を謳う私たち金融デザインチームが見たライフネット生命は、その原点に立った企業としての本質を、デザインを通じて「普通」に表現していることがわかります。そこには、利用者と自社スタッフの両者を大切に考えるライフネット生命の想いが、「手書きの顔」と「デジタル」という相反する二つの要素が調和したロゴマークによって見事に描かれています。
ネットの普及により人が見えにくい現代において、そのネットを活かしながら、人の見える工夫と努力で繋がりを強固に築くライフネット生命。デジタルであるながら、リアリティを追求する同社の今後の展開がますます楽しみです。

ライター:盛田司
TSUKASA MORITA

金融デザインディレクター
元アーティスト、モデル。とある事故がきっかけで継続が困難になり、追い討ちをかけるように金銭トラブルに巻き込まれる。そんな苦い経験の中で出会ったのがファイナンシャルプランナー資格。自らの力で経済力を身につけるため、2006年FP資格を取得、実務経験を経て2011年「盛田FP事務所」を設立。プレゼン資料を評価され、次第にFP、金融機関のセミナー、プレゼン資料を手がけるように。その後、 織田とともにデザインオフィス「 SHOWCASE」を立ち上げ、デザインのほか、デザインコンサルティング、動画制作、プレゼン資料等の制作を展開。現在ではアーティストの活動もひっそり始め、ステンドグラス、アート、デザインを展開するアートスタジオ「ONE」を立ち上げている。 >>プロフィール

 


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