インタビュー 2017.03.10
ライフネット生命インタビュー(2)
インターネットで生命保険を販売するライフネット生命にとって、ウェブサイトは会社の屋台骨を支える重要なツール。「正直に、わかりやすく、安くて、便利に」という、会社のマニフェストをストレートに表現する場でもあります。そんな大切なウェブサイトに携わるメンバーは、お堅い理系エンジニアかと思いきや、意外にも優しげな印象の好青年なお二人。営業本部お申し込みサポート部ウェブグループ・酒井宏平さんと古川敬一さんに、お話を伺いました。
第2回「ウェブサイト」編
ウェブサイトは、自分たちが演出する
「接客の場」
お客さま側から主体的に理解してもらえば、保険はわかりやすくなる
ライフネット生命のウェブサイトは、商品情報の提供はもちろん、集客や申し込みの手続きまで行う「店舗」であり「会社の顔」といえるもの。金融機関のウェブサイトの中では群を抜く簡潔さで、初めての人が訪れても、迷うことなく情報にたどりつけると感じる作りです。
サイトの中には、お客さまの不安や疑問に答えるページもあり、多くの社員が写真付きで登場しています。人を介在しないネット生保だからこそ「顔が見える」ことを大切にする姿勢は、会社のシンボルマークに“顔”をモチーフとして採用したことにも表れています。
とはいえ、わかりやすさや親しみやすさといった部分はもちろん、会社の屋台骨として営業的な要素も求められる中、申し込みの獲得につなげるポイントはどこにあるのでしょう。
「大事なことは、お客さま自身で保険を理解し、選んでもらうことです。そのため商品ラインナップは最小限に、サイトの文章も平易な言葉を使い、ウェブサイトのデザインもシンプルにしました。必要な情報に絞ってわかりやすいサイトを心がけています。お客さま自身で判断して保険を選んでもらえれば、自然と申し込みにつながりますし、満足度も上がるのではないでしょうか」
そう話す酒井さんの言葉は、「伝わりにくい金融を普通にしていこう」と活動する、金融デザインTEAMのコンセプトにも重なります。一方的な説明ではなく、お客さま自身が理解しようとする方向へ導くことが、保険をわかりやすくすることにつながるのでしょう。さらに、この考えを一歩進めた、生命保険会社では初めてという驚きの取り組みが始まっていました。
スキマ時間で相談できる『LINEで保険相談サービス』
その取り組みとは、酒井さんが「とてもチャレンジング」と話す“LINE”を使った保険相談。仕事や育児で忙しい人たちのために、メールや電話ができなくても相談できるようにと始めたサービスです。使い方は簡単で、LINEアプリからライフネット生命に友だち登録すれば、あとはワンタップで相談開始できます。
「1回の相談で保険を理解するのは難しいかもしれませんが、LINEなら気になることを少しずつ分けて相談できます。LINE上でオペレーターとキャッチボールしながら、保険の疑問や保障の不安を一つずつ解決できるので、より深く理解してもらえます。若い世代にとっては、電話やメールで相談するよりも使い慣れたLINEの方が親しみやすいでしょう。それに、『LINEなら気軽に相談できる』と感じて登録してもらえれば、お客さまとのつながりもできますし」
取材班も登録して使ってみましたが、保険相談の概念が、ガラガラと崩れ落ちるような衝撃でした。相談というよりも、会話感覚で質問に答えてくれるのです。保障内容などを調べるならウェブサイトの方が情報量で勝るものの、そこまで至らない人たちを将来の見込客とするために、LINEが一役買っているのは間違いなさそうです。SNSの仕組みを相談に利用することは、これからの金融にはごく“普通”のことになるような予感を感じました。
ライフネット生命LINE保険相談サービス
https://www.lifenet-seimei.co.jp/sph/line/
「ウェブで接客」を実現するために、お客さまとの接点を複数用意
「お客さまに、相談のきっかけになる場を多く用意したいからです。私たちはタッチポイントと呼んでいますが、ひらたく言えばお客さまとの接点です。私たちにとってはウェブサイトがお店ですから、そこでどういう“接客”をするのかはとても大切です。LINEを採り入れることで、スマホの向こうに人がいて回答しているかのような感覚を体験できます。お客さまの立場になって質問に細かく答えること、お客さまに寄り添い共に走る伴走者になろうという考えは全社員で共有しています」
「ウェブで接客」という言葉に新鮮な驚きを感じた取材班ですが、自分達の顧客層にマッチする接客方法を考えることも、ウェブグループの役割なのですね。
アナログな響きに聞こえる接客という言葉の裏には、人の温もりさえ感じます。電話・メール・LINEといった接点を複数用意し、お客さまに寄り添うことにこだわる姿勢は、 顔の見えるコミュケーションを指向するライフネット生命の戦略的デザインともいえそうです。
スマホ版のウェブサイトは専用デザインを用意
一般的に企業のウェブサイトは、パソコン用もスマホ用も同じデザインで作られています。ところが、ライフネット生命は、それぞれ別のサイトとして2種類用意しているとのこと。なぜ、そこまで手間やコストをかけるのか? 取材班の興味はがぜん盛り上がり、事情を聞いてみると……。
「サイトを分けたのは、スマホ版のサイトを体験してもらいたいのと、使ってもらったお客さまの声を吸い上げるためです。スマホサイトのデザインはあえてスタンダードな作りにしました。ウェブ全体でいえば、スマホサイトは登場して日が浅いので、先進的なデザインにすると、操作性含めお客さまが迷われてしまう可能性がありますから」
スマホサイトのデザインに正解がない中で、チャレンジしながら真実を探る姿に、斬新さよりもユーザーファーストの視点から、あえて「普通」のデザインにしているところにも、ライフネット生命の接客の精神が垣間見えました。
見る人で画面が変わる“究極のコミュニケーション”は実現するか?
「蓄積した膨大なデータをAIで分析すれば、サイトにアクセスした人の属性や考え方を判断できます。お客さまがどういった情報を必要としているのかが分かれば、その人に最適な情報を見せるウェブサイトを自動で作れます。アクセスした人によってデザインが変化するサイトを、AIが作る時代が来るのではないでしょうか」
すでに、技術的には可能なところまで来ているといいます。個別のサイトが作られるようになれば、究極のコミュニケーションといえそうな、ちょっとワクワクする未来が待っているかもしれません。
取材の終盤、ここまで控えめにインタビューに応じてくれていた古川さんが、金融をわかりやすく、便利にすることの意義を語ってくれました。
「実は、ウェブサイトを作っているスタッフには金融機関出身者はひとりもいません。私はもともとデザイン会社にいましたから、保険のこともほとんどわかりません。でも、わからない人間が作るから、わかってもらうために全力を尽くします。お客さまと真摯に向き合って、便利でわかりやすいサイトを作り続けることが、お客さまとの信頼を築く最高の接客だと考えています」
わかりやすさや便利さといった、金融を普通にするための取り組みを体現しているライフネット生命のウェブグループ。これからの活躍の成果は、日々進化していくウェブサイトが語ってくれることでしょう。
HIROSHI TAKAHASHI
ディレクター・デザイナー
デザイン事務所、百貨店宣伝部、出版・映像会社で商業デザインの実務を身につける。三十路を過ぎた頃、デパ地下ベーカリーに転職してアルバイトや社員のマネジメントを経験。その後、広告代理店を経て、フリーのデザイン事務所を10年続ける。同時にコピーライティングの学習を開始。FP関係出版社に編集者として再就職すると、金融のことを何も知らないことに衝撃を受けFP資格を取る。2011年ファイナンシャル・プランニング事務所 FPライフレックス開業。“フレキシブルな人生を”という思いでつけた事務所名の通り、過去にこだわらない柔軟な生き方と、転職回数の多さは自分の強み。さまざまな仕事や働き方の経験から、一度きりの人生「やりたいことは、ためらわずに実行!」で夢や希望を実現してほしいと活動中。既存のファイナンシャル・プランナーの枠にハマらないアドバイスや情報提供を目指す。 >>プロフィール