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 インタビュー  2017.08.07

金融を普通にするパイオニアとなるか!?住信SBIネット銀行に見る身近なFinTech最前線【髙木編】
 
ジャンヌ・ダルク現る?「フィンテックな生活」最前線現場に行ってみた

 

 
 わたしの中で、住信SBIネット銀行は、銀行界、いや金融業界のジャンヌ・ダルク。最近、銀行界隈をざわざわさせているAPIやブロックチェーンをどう見つめているのでしょう?「火サス」も真っ青な、フィンティク最前線現場の「ほー!」や「えぇーー?!」をお聞きし感じたことを、つれづれなるままに書き留めてみます。

「フィンテックな生活」実現には、もしや時間がかかる?

 経済産業省が5月に発表したFintechビジョン(経産省)の末尾には、とても心踊る風景が紹介されています。題して「フィンテックな生活(平日編)」。フィンテックが当たり前となった、ある近未来の一日の様子です。例えば、

(朝)コンビニで買い物したとたん、家計の記録は自動で完了→家計簿アプリ、API連携
(日中)投資はAIに任せ、相場のハラハラ感から卒業→ロボ・アドバイザー
(夜)飲み会代は、スマホで割り勘、OKボタンで支払い完了→割り勘アプリ、API連携

 

 
 なんて快適! お金の「めんどくさい」をすべて解消してくれるテクノロジーがフィンテックです。ですが、その便利さを理解しているのは、まだほんの一握りの人たち。わたしたち FPですら、この手のテクノロジーに疎い人も多いのです。サービスを提供する側の銀行にしても、その取り組み姿勢はまちまち。特に、フィンテック活用のキモとなるAPI開放に関しては、積極派、慎重派と対応に大きな差があるようです。すぐに収益に結びつかないからやりたくない、でも、他行に遅れをとるのはマズイ、その複雑な心中が見え隠れします。

住信SBIネット銀行は「便利&楽しく」を実現していくチャレンジャー

 今回、フィンティク活用分野の最前線を走る、住信SBIネット銀行Fintech事業企画部長の吉本憲文氏から、直々にレクチャーを受ける機会に恵まれました(なにげにすごい)。最先端の現場を知る吉本さんのお話から、究極の「フィンテックな生活」が見えた気がしました。

住信SBIネット銀行Fintech事業企画部長 吉本憲文氏
 
 現在よくあるフィンテック活用例は、預金や支払い、借り入れなど、あくまで今ある銀行手続きを便利にするものが中心。例えば、スマホで残高が確認できる、定期預金や株などの申し込みができるなどです。
 
 そんな中、住信SBIネット銀行はつぎなる便利を目指し、APIを積極的に開放。マネーフォワードと提携して家計の見える化を応援したり、ロボアドバイザーWealthNaviとの提携では、わずらわしい本人確認手続きを減らすなど、どの銀行よりも先立ち、APIの活用を始めています。
 
 銀行でありながらリスクを恐れず、API開放の突破口を開いた功績は大きいです。時代を切り開く戦国武将のようでかっこいい!それだけでなく、おつり貯金アプリfinbeeとの提携では、 「貯金は楽しい!」という付加価値をも提供。こういう 遊び心こそ、フィンテックには外せない要素です。
 

ザンネン!「フィンテック」を難しくしちゃってるのは、だあれ?

 必死にイノベーションに臨む銀行業界。一方で「一般のユーザー」の目には、フィンテックなるものは、どのように映っているのでしょうか? 日頃の相談などから感じるのは、まだまだ普通の人には、「わけのわからないもの、難しいこと」に見えているということ。古めの昭和人の中には、はなから脳ミソのシャッターを降ろしてしまう人も…(笑)。
 
「これからは、フィンテックの使い方をもっと勉強しましょう」
 
 最近、よくこんな言葉を耳にするようになりました。こう発信しているのは、往々にしてFPや金融業界にいる人たちです。「ん?勉強?」そもそも、勉強しなくちゃ使えないようなサービスを、フィンテックって呼んでいいのかな? それに「この技術すごいんだぜ!」と、見たこともない用語つきで自慢された日には、ユーザーは圧倒され終わります。
 
 「いつの間にかみんな使っちゃってるよね~」というサービスこそが、真のフィンテック。LINEfacebookのように、教わらなくても感覚的な操作で使えれば、空気のように広まるはずです。APIだの、イノベーションだといったユーザー側には関係ないワードは封印。「いいから一度ポチっと押してみて。ねっ、便利でしょ!」なんてノリで伝えてくれれば、みんな素直に利用するでしょう。
 
 便利でカンタンなことを、わざわざややこしい印象にしてしまうのは、総じて金融業界にいる人たち。せっかく便利なテクノロジー、楽しく伝えなきゃ。

APIで無限のサービス 究極は「インフラのような銀行」

 
 API開放は「フィンティクな生活」への始まりに過ぎません。吉本さんの頭の中には、もっと進化した銀行の姿があるようです。それは、もはや銀行という枠にとらわれないイノベーション。「そこまで行くか〜」という感じです(笑)。例えば、 冷蔵庫の卵がなくなったら、自動的に注文、その支払い(決済)までが同時に完了してしまうような仕組み。決済部分に銀行が介在していながらも、その存在を全く感じなさせない世界です。吉本さんは、住信SBIネット銀行の目指す姿を「インフラのような銀行」と表現されました。意識しないけど、なくてはならないって、究極の銀行の姿ですね。

 
 これからの銀行は「頼んでくれたらやってあげる」から、「側でそっとお手伝いします」といった裏方的な姿へとシフトしていくでしょう。今回、銀行の理想ともいえる姿に気づかされ、「銀行、まだまだいけるじゃん!」と思った次第。これでも銀行ファンですから。

普通のユーザーが銀行に望むことって?

 
 さて最後に1つ……。今後、銀行がこれらサービスをどう提供してくれたらうれしいか、ユーザーの立場で考えてみました。いらないお世話か(笑)。
 
 この先、改正銀行法などにより、API開放が義務づけられると、銀行APIを利用したサービスが無限に登場してくるでしょう。ただ、人は選択肢がたくさんありすぎると、選ぶことがストレスになり、思考や行動がストップしてしまいます。
 
 多くのニーズに応えるため、というか、他行に負けないために(笑)、たくさんのサービスを並べるのもありでしょう。ですが、ユーザーがフィンティクの便利さを体感するには、サービスの数よりも、使いやすさや楽しさの方が重要。そこを極めてもらえると、ユーザーとしてはありがたいかもです。「あのサービスなら、○○銀行よね!」というのも素敵です。
 
 そして、わたしたちがいちばん知りたいのは、フィンティクで自分の生活がどう変わるのかということ。どんなときも、必要な情報だけを正しく、楽しく伝えて欲しいのです。ユーザーは「なんだか楽しそうな銀行」に好感を持つことも書き添え、終わりにします。
 
 さてさて、「フィンテックな生活」が普通になるのは、いつごろなのかな。

 
ライター:髙木惠美子
EMIKO TAKAGI

ライター
温暖な知多半島が生んだ、遅咲きの天然系ファイナンシャルプランナー。元銀行員、カラリスト、手書きPOPライター。地元愛がこのうえなく、地域に暮らす人々のマネー相談に「ハイ、よろこんで~!」と奮闘中。そのかたわら「書きもの」という手段で、お金の情報を発信する魅力にもとりつかれ、わかりやすさを追求した記事執筆にも取り組む日々。自分の最大の武器は「普通の人の普通の感覚」を持ち続けていること。街のオーケストラのフルート吹きでもあり、チームでなにかを創りあげる力も備えていると自負している。趣味は、ミュージカル・歌舞伎をはじめとした舞台鑑賞。趣味にお金を投じ過ぎるも、「心が豊かになるものにはお金を使おう」がお金に対するスタンス。また、新聞スクラップが趣味の新聞マニアでもある。「金融を普通に」部員として情報感度を磨く日々を過ごしている。>>プロフィール

 

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