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 インタビュー  2017.08.16

金融を普通にするパイオニアとなるか!?住信SBIネット銀行に見る身近なFinTech最前線【高橋編】
 
API開放は、銀行からのおもてなしのメッセージ!?

 
 “フィンテック”が一般誌でも特集されるなど、進化した金融サービスへの関心が高まる中で、住信SBIネット銀行のフィンテック戦略をテーマとした勉強会に参加しました。講演いただいたのは、FinTech事業企画部長・吉本憲文さんです。
 
住信SBIネット銀行 FinTech事業企画部長・吉本憲文さん

 

API開放で金融業界にノベーションを起こす!

 いま金融サービスの世界では“フィンテック”が旬です。ファイナンス(金融)とテクノロジー(情報技術)を組み合わせ、これまではなかった便利で新しい金融サービスが続々と登場しています。
 
 ところが、噂によるとアメリカでは“フィンテック”は死語になりつつあるとか。もはやフィンテックは特別なものではなく、「普通」に生活の中に取り込まれたということなのでしょうか。
 
 日本でフィンテックを死語にするならこの企業だろうと思わせる勢いなのが、今年(2017年)開業10周年を迎える住信SBIネット銀行です。フィンテックで、業界の最先端を走る銀行と言ってもいいすぎではありません。
 

 
 金融業界にイノベーションを起こそうと、住信SBIネット銀行が2016年から取り組んできたのが「API開放」です。APIとは、外部から別のソフトウェアを呼び出して利用する接続仕様のことで、今後の金融サービスを活気付けるための要になるものです。

続々と新サービスをリリース!

 この1年余りの間に、住信SBIネット銀行では外部のベンチャー企業と提携し、APIを利用したフィンテックのサービスをリリースしてきました。しかも、SBI銀行のAPI開放は、世界的に見ても先進的な取り組みだそうです。提携内容の一部を見てみると・・・。
 
◎自動家計簿「マネーフォワード for住信SBIネット銀行」(入出金明細照会機能など)
◎クラウド型会計ソフト「MFクラウド」「freee」(振込結果照会機能など)
◎自動貯金サービス「finbee」(更新系APIによる口座内振替機能)
◎ロボアドバイザー「WealthNavi for住信SBIネット銀行」(本人確認業務の軽減)
 
 

 
 短期間で、外部企業と連携しながら、フィンテックの見本市のように新サービスを取り揃えるスピード感には脱帽します。これからも隠し玉が飛び出しそうな雰囲気ですが、それは登場時の楽しみとして・・・。
 
 API開放のメリットとしては、先述の提携サービスごとに見てみると、主に次のようなことが挙げられます。
 
◎自動家計簿:残高照会・入出金明細照会時の、ID・パスワードなどセキュリティ向上
◎クラウド型会計ソフト:振込手続きの簡略化と振込事務ミスの軽減
◎自動貯金サービス:貯金の目的別口座など、新たなユーザー体験。アプリ提供事業者にID・パスワードなど個人情報の預託が不要
◎ロボアドバイザー:口座開設時の、本人確認の業務の簡略化
 
 来春には改正銀行法が施行され、銀行などにAPI開放努力が義務付けられます。とはいえ、どのくらいの金融機関がAPI開放に踏み切るのかは未知数。金融機関が抱える顧客層やAPI開放に対する考え方、資金的な体力差などもあるようです

一般ユーザーにとってフィンテックの極めつけは?

 APIの開放が拡大すれば、金融サービスはますます便利に進化しそうな気配です。 はたして、便利なサービスは家計をどう変えていくでしょう? お金が貯まるのか、無駄遣いを減らせるのか、知識がなくても資産運用ができるのか・・・。
 
 フィンテックという括りの中で注目のAPIではありますが、一般ユーザーにとってはその仕様がどうであるのかは関係のないこと。「○○がなくても(できなくても)、○○ができるようになる」というのが、一般ユーザーにとっては最良のフィンテックであり、これはまさに UX(ユーザー体験)の実現に他なりません。
 

 
 先述の、自動貯金サービスfinbeeでいえば、単純に貯金や投資だけではなく、買い物のおつりを貯蓄や運用に回すという、新しい体験が加わりました。さらに、フィンビーはおつりだけではなく、毎日の歩数の達成度なども貯金方法に加わっています。
 
 体験や娯楽性が加わることで、金融サービスがより楽しく手軽に使えるようになってきたわけです。こういったことを実現できる銀行は、多くの人から選ばれる銀行になる可能性大ですね。
 
 かつての銀行選びは、自宅や勤務地の近くに店舗やATMはあるかなどが重視されました。 今後はスマホ世代の台頭で、インターネットバンキングやアプリの使い勝手、便利でエンターテイメントな感動を与えるサービスの有無が選択の基準になるかもしれません。

フィンテックのインフラになる決意を表明!

 昭和の終わりごろに「ハイテク」という言葉が流行りましたが、もう耳にすることはありません。かつてハイテクだった技術は、いまでは当たり前のものになっています。フィンテックという言葉が死語になった時、世の中の金融サービスは、意識せずとも便利で普通に利用できる時代になっているのは間違いないでしょう。
 
「フィンテックのインフラになる」と語る、吉本憲文氏

 
 住信SBIネット銀行では「フィンテックを活用して顧客のニーズを予測し、サービスを提供する」ことを目指しています。そして、冒頭でご紹介した吉本さんは、「フィンテックのインフラになる」という、印象的な言葉を語ってくれました。
 
 これほど、ユーザー目線を意識し、オープンなマインドを持つ銀行を知りません。住信SBIネット銀行にとって、APIの開放は「おもてなしの気持ちを開放する」寛容な心のあらわれ、と表現してもいいかもしれません。
 
 奇しくも、スマホを代表するiPhoneが登場して10年。住信SBIネット銀行の歴史と重なるのは単なる偶然でしょうか。掌に乗る情報端末とネット銀行、10年前から動き出した2つの大きなうねりが、いまのフィンテックの隆盛に大いに貢献していると感じます。

 
ライター:高橋浩史
HIROSHI TAKAHASHI

ディレクター・デザイナー
デザイン事務所、百貨店宣伝部、出版・映像会社で商業デザインの実務を身につける。三十路を過ぎた頃、デパ地下ベーカリーに転職してアルバイトや社員のマネジメントを経験。その後、広告代理店を経て、フリーのデザイン事務所を10年続ける。同時にコピーライティングの学習を開始。FP関係出版社に編集者として再就職すると、金融のことを何も知らないことに衝撃を受けFP資格を取る。2011年ファイナンシャル・プランニング事務所 FPライフレックス開業。“フレキシブルな人生を”という思いでつけた事務所名の通り、過去にこだわらない柔軟な生き方と、転職回数の多さは自分の強み。さまざまな仕事や働き方の経験から、一度きりの人生「やりたいことは、ためらわずに実行!」で夢や希望を実現してほしいと活動中。既存のファイナンシャル・プランナーの枠にハマらないアドバイスや情報提供を目指す。 >>プロフィール

 

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