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 インタビュー  2017.09.04

金融を普通にするパイオニアとなるか!?住信SBIネット銀行に見る身近なFinTech最前線【石川編】
 
FinTechのことがよくわかる銀行のお話

 
 2017年4月、住信SBIネット銀行主催のFP&プレス向け勉強会に参加させていただいたことがきっかけで、今回、私たち金融デザインTEAMのために、特別にお話しを聞かせていただきました。「特盛り汁だくで!」と講義内容をリクエストしたおかげで、最先端の“現実”をしっかりこってり知る(汁?)ことができました。

FinTechのことがよくわかる住信SBIネット銀行

 はじめに、今回、特別にお話しを聞かせていただける場を設けてくださった、住信SBIネット銀行の広報の皆様、包み隠さずFinTechの現状を話してくださった、同行のFinTech事業部長である吉本憲文氏に、この場をお借りして御礼申し上げます。
 
 住信SBIネット銀行さん、そして講師の吉本氏のお話には“自信”を感じました。それもそのはず、同行は日本で初めてAPIを公開し、いち早く外部のFinTechベンチャーのサービスを取り入れているからです。
 
 中心人物である吉本氏は、日本の金融にFinTechを普及させるべく、日々奔走されています。そんな同行だからこそFinTechのことがよくわかる銀行として注目したいと思いました。
 

吉本憲文(よしもとのりふみ)住信SBIネット銀行FinTech事業企画部長
ヤフー、野村総合研究所を経て、2015年2月に住信SBIネット銀行に入社、2015年8月より現職。

今のFinTechに関わる代表的な技術とは?

 FinTechはFinancialとTechnologyを掛け合わせた造語で、ATMやインターネットバンキングもFinTechといえます。今、流行りのFinTechはさらに進化していて、主にAPIやブロックチェーンの技術によるものが代表的です。人工知能(AI)も大いにFinTechとからんできますが今回はシンプルに2つの技術に注目します。
 

【API】

 APIとはApplication Programming Interfaceの略称で、アプリ(プログラム)同士をつないで情報のやりとりができる機能のことです。自分のWebサイトにGoogleマップを表示できたり、ワードでエクセルのグラフを編集できたりする機能がそれです。FinTechでは金融機関のシステムと外部のアプリケーションをつないで外部のアプリケーションにより新たなサービスを創造できる機能として期待されています。
 

【ブロックチェーン】

  ブロックチェーンとは、ビットコインの取引履歴を取引ごとに記録し(これをブロックという)、それらを数珠繋ぎのように連続的に記録したものです。記録されているコンピューターは一つではなく、世界中に分散したコンピューター(ノードといいます)に記録(共有)される仕組みなので、ブロックチェーンは分散型台帳とも呼ばれます。ビットコインはこのブロックチェーンによって成り立っているものですが、ブロックチェーンの技術は革新的であるため、ビットコイン以外のさまざまな用途に応用されはじめました。FinTechでは主に“国際送金”にイノベーションを起こしそうです。
 

住信SBIネット銀行に見るFinTech

 住信SBIネット銀行が邦銀の中でもFinTechのサービスで他行をリードしているのは一目瞭然。「API」や「ブロックチェーン」の技術を活かしたサービスや取組みがたくさんあります。あまりにもFinTechだらけなので簡単に紹介します(笑)。
 

●マネーフォワード for 住信SBIネット銀行【API接続】

 日本の銀行ではじめてAPIを公開した同行は、はじめに、自動家計簿サービスを提供するFinTech企業マネーフォワードとAPI接続しました。マネーフォワードのユーザーで同行に口座を持っている人であれば、マネーフォワードにパスワードを登録することなく、直接同行から残高照会、入出金明細のデータをマネーフォワードに反映することができます。このようにデータを参照するためのAPIを 「参照系API」といいます。
 

 

●freee【API接続】

 freeeは法人や事業主向けのクラウド会計ソフトです。参照系APIで同行に接続して口座情報を参照できます。さらに、振込先登録情報と振込結果照会をAPIで接続し、Web連携で振込操作をすることで、会計ソフト上で振込をしているかのように操作ができるそうです。マネーフォワードの法人・事業主向けサービスである「MFクラフドの経費」でも同様のことが実現できます。
 

●finbee【API接続】

 finbeeは目的貯金、おつり貯金が自動でできるFinTechベンチャーのサービスです。
同行とAPI接続をすることで、同行のサービスである目的別貯金にfinbeeのアプリを使って資金移動ができます。このように口座の情報を書き換えるAPIは 「更新系API」と呼ばれています。また、同行のデビットカードを使うことで、おつり貯金も可能になります。
 

 

●WealthNavi for 住信SBIネット銀行【API接続】

 WealthNaviはコンピューターに運用をまかせるロボアドバイザーと呼ばれるサービスです。特筆すべきは、同行にある “本人確認済”の情報をAPIでWealthNaviと共有することで、WealthNaviを利用する際の手続きを簡略化することができます。これは邦銀初のサービスです。
 

 

●国内外の為替【ブロックチェーン】

 SBIホールディングスとその子会社であるSBI Ripple Asiaが音頭をとって進めている「内外為替一元化コンソーシアム」は内国為替と外国為替を一元化して24時間リアルタイムで送金できるインフラ構築を目指しています。そのインフラにはブロックチェーンの技術が使われており、住信SBIネット銀行始め多くの銀行がこのコンソーシアムに参加しています。住信SBIネット銀行は参加行の一つですが、SBIホールディングスが音頭取りをしていることから見ても住信SBIネット銀行の存在は大きいといえます。
 
 さらに同行は、ブロックチェーン技術を銀行の業務システムへ利用できるか実証実験を行うなどFinTechの中核技術といわれているブロックチェーン技術の活用にも抜かりありません。
 

●その他

 これまでの銀行の融資審査では着目していなかったトランザクションデータ(日々の取引データ)をリアルタイムでチェック。短時間で審査を済ませて融資をするサービスを「トランザクションレンディング」といいます。これもFinTechの代表的なサービスです。住信SBIネット銀行のサービス「レンディング・ワン」ではクラウド会計のユーザー向けやクレジット決済代行会社の加盟店向けに、トランザクションレンディングを実施しています。
 
記事を書いている本人ももうお腹いっぱいになっていたのでこの辺で・・・。

銀行が“普通”になるってどういうことか少しわかったかも

 Windows95が出たとき、インターネットが身近になりました。2000年になるころにはインターネットはビジネスや生活でかなり実用化されはじめ、だれもがインターネットを便利に感じるようになりました。そして今、スマートフォンの登場によってもうワンランク上の大きな変化を感じている最中かと思います。
 
 歴史に残る パラダイムシフトは必ず何かのテクノロジーがあって起こっています。インターネットは序章で、FinTechをつかさどるブロックチェーンやAI、そろそろ実用化レベルになりそうな量子コンピューターなどの技術がこれから起こるパラダイムシフトの主役になりそうです。
 
 どんな変化が起こるか想像ができませんが、少なくともこれまでの金融のあり方が大きく変わることは間違いありません。そのような中で銀行の役割はどうなるのか?今回の吉本氏のお話の中にそのヒントがありました。
 
  金融はそもそも経済のインフラです。電話・電気・ガス・水道と同じですね。携帯電話がよい事例です。NTTの“インフラ”を利用してサービス展開する通信業者と契約し、端末は家電メーカーのものを使う。銀行もNTTのようになっても不思議ではありません。 住信SBIネット銀行が推進しているのはまさに銀行のインフラ化。APIを公開して自らインフラとなり、顧客との接点は外部の企業にまかせる、といったスタンスです。銀行が「安全、安心、便利」といわれて“普通”になるときはインフラ化したときかもしれません。
 
 
ライター:石川英彦
HIDEHIKO ISHIKAWA

代表取締役
大学卒業後、就職することなく海外放浪へ。大好きなオートバイで北は「アラスカ・北極海」南は「アリゾナの砂漠」まで、北米を野宿しながら37,000キロ走破。帰国後、老舗ホテルでボーイの仕事し、サービス業とはなんたるかを学ぶ。あるきっかけで保険代理店の手伝いをしたことで金融の世界を知る。その“奇妙”な世界に疑問を感じ「お金に関する情報形成」「売り手と買い手がハッピーになる金融コンテンツづくり」をミッションとした、 株式会社マネーライフナビを設立(1996年)。FP(ファイナンシャルプランナー)の実務をこなしながら多数の金融コンテンツを手がける。2011年には エフピーリサーチアンドコンテンツ株式会社を設立。全国各地のご当地FP®︎による多数の意見を発信。ただいま、「金融を普通にする」ための起爆剤を充填中。 >>プロフィール
 

 

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