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 マネーコンテンツ  2016.11.29

「銀行のなにが普通じゃないの?」偵察に行ってみた

店舗はユーザーにいちばん近い場所だから...

 とある日、某銀行のロビーには、窓口で働く人、客の様子を偵察する怪しげな女がおりました。はい、わざわざこのために出陣したというわたしです。ちょっと覆面調査チェックではありますが、決して悪意はございません。かつては、自分も銀行員。いつも心のどこかで「銀行がんばれ!」って思っている 1人なのです。
 
 最近はというと、銀行のことをボロクソに叩きのめす書物や記事ばかり。「手数料ビジネスに走りすぎだろ、本来の業務忘れたんかい!」「いまだに高飛車で、客を客と思ってないだろ」などと、まるで悪党の代名詞。「銀行員さんを息子の嫁にしたいわ」なんて、店頭でチヤホヤされた時代があったなと、自分もすっかり忘れそうになっていたところです。
 
 銀行の栄光を懐かしんでいるだけでは、金融デザインチーム部員のお役が果たせません。 「なにがそんなにいけないのか体感してみよう」と、店舗ロビーの偵察に出掛けてみたわけです。くどいですが、あくまで愛情ゆえのこと。自分をまともな社会人に育ててくれた銀行というところには、いつまでも輝いていてほしいですから。
 
ところが!
世の中のニーズを置き去りに、「何十年も変わってないじゃん」的なことが、あまりに多く て驚きます。「おったまげ〜」な3連発をごらんください。
 

1.店舗の中は相変わらずの「威圧感」

 出向いてみたのは某メガバンクの営業店。ちなみに、ここに自分の口座はありません。 近頃は、顧客の手続きがらみで、ローンセンターなどに行くことはあっても、プライベートで銀行窓口に出向くことはすっかりなくなりました。窓口に行かなくても、ネットバンキ ングで振り込みもできるし、コンビニのATMでお金も引き出せます。近年、わたしのようなユーザーは、間違いなく増えているでしょう。
 
 さて、メガバンク独特の敷居の高さは相変わらずわらず健在。入口の自動ドアが開くな り、仁王立ちした警備員の威圧感にビビる。着いてホッとする間もなく、「今日は、なんの お手続きで?」と勢い迫ってくるロビーレディーさんに、二度ビビる。ちょっと待ってく ださい、人には自分のペースというものがあるのですけど......。というか、「手続ある人しか来ちゃダメよ」という笑顔の奥の眼差しが怖すぎます。
 
 銀行ですから、迅速な対応や処理は最優先でしょうが、いまだに機械的な客さばきが続いていてびっくり。「お客さま扱い」をされるだろうなんて思いで行くと、軽くショックを 受けます。それに、防犯が大事なのもわかりますが、用のなさげな人(まさに、この日のわたし^^; )を寄せ付けない空気感も、昔となんら変わっていません。あらゆる業界で「おもてなし」が重視される時代になったというのに、ここの時間は止まったまま。「銀行は何様のつもり?」と叩かれているわけにも納得です。
 
 ネット送金やコンビニ出金ができるようになったいま、店舗に立ち寄る人の目的も、徐々に変わってきている気がします。「近くに来たついでにパンフだけもらいたい」「どんな商品があるか聞いてみたい」など、わざわざ店舗に出向く目的は、単なる手続きから相談に、 もっとシフトしていくでしょう。つまり、店舗はコミュニケーションの場。応対の迅速さや、防犯面さえ重視していればよかった時代と同じ空気を発していては、これからファン になる可能性がある人たちを逃がしてしまいます。現に、わたしも「ここに口座は作らん ぞ」と、強く思いましたから。
 

2.いまだに3時に閉店 不思議すぎる営業時間

 スーパーが夜10時まで営業延長しようが、コンビニが24時間営業になろうが、かたくなに「午後3時閉店」を守りとおしている銀行の信念は、なかなかの尊敬ものです(気が弱いのでやんわり嫌み)。そもそも銀行の営業時間というのは、法律で決まっています。「銀行法施行規則」の第16条というのに、「銀行の営業時間は、午前9時から午後3時までとする」と書いてあるからです(銀行の皆々さまには釈迦に説法、お許しを)。
 
 とはいえ、人はずっと同じ業界、同じで集団で過ごしているうちに、そこの常識が世の中の「普通」と大きくズレていることに、気づかなくなるものです。シャッターが降りたあとの業務が大わらわなことをひいき目に見ても、いまどき3時閉店はやっぱり「普通じゃない」です。伝票集計が手作業だった頃ならわかる話ですが、あれから集計システムは、格段に進化しているわけですし。
 
 世間には内緒だったらごめんなさい。法律には「前項の営業時間は都合により延長することができる」とも定められています。ほんとは延長できるはず。最近では、休日に営業するローンセンターなども増えましたが、恩恵を感じている人はまだまだわずかです。
 
 中途半端にサービス拡大したばかりに「やろうと思えば、ほんとは平日も夜までやれるんじゃないの」と、かえって不満の声が聞こえてきます。そもそもこのサービス時代、「早々に店を閉める態度そのものが気に入らない」というのが、多くの人たちの本音ではないでしょうか。そこ、気づいてほしいです。
 

3.いつまでたっても、チラシやパンフは自分たち目線

 もらったパンフをいくつか眺めてみました。いつもは仕事目線で、商品概要をチェックするときなどに利用していますが、「なにも知らない目線」で見てみると、まあナゾの表現が多いこと。これは、ほとんどの金融商品のパンフにいえること。
 
 たとえば、「為替ヘッジ」とか「リアロケーション」というワード、金融業界では日常語でも、普通の人にとってはまるで異国語。ためしに、凡人である家人や友人にも、パンフを見てもらったところ、「日本語でもわからん、見る気がせん」で終了。立派なものを作っても、誰も見てはいないのです。
 
 こういった「??」なワードが平気で使われ続けているのは、金融商品パンフくらいでしょう。家電や食品、車など一般商品のパンフには「言葉がわからない」なんてものは、まずありません。いまは、スマホやタブレットを使い、視覚で情報を取るのが当り前になっています。もっと、もっとわかりやすい表現、直感や視覚でわかるパンフでなければ、作るだけ経費のムダです。
 

伝えたいこと

◎ 銀行はサービス業「サービスのデザイン」にも目を向けて!

 
 いまや、銀行もサービス業。もし、そこに気づいていない銀行があれば、すぐに思考をあらためないと、きっとユーザーは離れていくでしょう。消費者は、企業からサービスを提供されることに、すっかり慣れっ子になっています。これからは銀行も、消費者の利便性に寄り添うことで成長してきた、コンビニや外食チェーンなどの姿勢に習うべきです。
 
 人は金利や商品性だけで、銀行を選んでいると思っていたら大間違い。むしろ、イメージや信頼性、親しみやすさから選ぶことも多く、行員やコールセンターの質もシビアな目でジャッジしています。
 
 「金融デザイン」というとおおげさに聞こえますが、愛される銀行になるために、求められる要素をチョイスしていく行為は「デザイン」そのもの。サービスのデザインが無駄なく美しければ、必ずファンは増えていくと思っています。
 
これからも、庶民の声を代弁するレポをしていこうと思います!
 

 
ライター:髙木惠美子
EMIKO TAKAGI

ライター
温暖な知多半島が生んだ、遅咲きの天然系ファイナンシャルプランナー。元銀行員、カラリスト、手書きPOPライター。地元愛がこのうえなく、地域に暮らす人々のマネー相談に「ハイ、よろこんで~!」と奮闘中。そのかたわら「書きもの」という手段で、お金の情報を発信する魅力にもとりつかれ、わかりやすさを追求した記事執筆にも取り組む日々。自分の最大の武器は「普通の人の普通の感覚」を持ち続けていること。街のオーケストラのフルート吹きでもあり、チームでなにかを創りあげる力も備えていると自負している。趣味は、ミュージカル・歌舞伎をはじめとした舞台鑑賞。趣味にお金を投じ過ぎるも、「心が豊かになるものにはお金を使おう」がお金に対するスタンス。また、新聞スクラップが趣味の新聞マニアでもある。「金融を普通に」部員として情報感度を磨く日々を過ごしている。>>プロフィール

 

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